理工学研究科委員長の挨拶
大いなる夢を持って、その実現に向けて共に進もう

理工学研究科委員長 硲 文夫
今や、計算機であれ、携帯電話、自動車、身の回りにあるものはどれも使いやすく、便利になり、あらゆる情報も一瞬のうちに手に入れることができる時代です。しかし、このような急激な科学技術の進展、物や情報の洪水のなかで、私たちが決して忘れてはならないこと、それはそのような科学技術と人間とのかかわり合いを見つめる視線です。大学院を終えて社会に出て技術者、研究者あるいは教育者としてこれからの世界に貢献できるかどうか、この大学院での心の持ちかたに大きく関わってくるでしょう。もちろん大学までに身に付けた学力や知識、技術は大いに役立つことでしょう。しかしその上に立って自らがどのような夢を見いだして、その実現にむけて大学院時代にどれだけ努力したかがその後の一生を左右するかもしれない、そういう大事な時期であると思います。
大学までは与えられた問題や課題を解決するという形の勉強が主ですが、今後は自ら課題を見つけていくということが要求されます。そこに専門にとらわれない広い視点、柔軟な発想を持つことが必要となってくるわけです。幸いこの理工学研究科では私たちの夢の実現に向けて最先端の科学・技術の研究・開発が日々行われており、さらには公開講座や研究集会を開催して、外部の研究者・技術者との交流の機会作りを支援する体制も整ってきています。また平成21年4月からは、従来の学部の8学科体制と並行した8専攻体制から、理学系・情報系・工学系・生命系からなる4専攻体制へと移行しました。これは今までにもまして様々な学問分野の境界を越えた融合が進んでいく状況に即応できることを目指して改編されたのです。皆さんもぜひこれらの利点・環境を大いに生かして知見を広げていって下さい。
最初に述べたように、今は情報も含めて「もの」が氾濫している時代です。近視眼的な「ものづくり」だけでは済まない時代といってもいいでしょう。むしろこれからは「物事」のうちの「ことづくり」、何が本当に必要とされている「こと」なのかを見極めつつ、「もの」が使われる事態「こと」まで含めての「ものづくり」が求められるのです。こんな「こと」を解明・証明できたらいいなあ、というのも「ことづくり」の一つと言えるでしょう。そしてそのためには「ひとづくり」、つまりそういう広い視野を持って夢を実現していく「ひと」として自分を磨いていくこと、しかも独りよがりでない夢、多くの「ひと」と共有できるような夢を共に紡いでいくこと、これが求められるのです。
恵まれた教育・研究環境を有効に活用して、充実した大学院生活を送って下さい。そして、ここでの生活を皆さんが将来の「ものづくり」、「ことづくり」、「ひとづくり」に生かして下さることを期待しています。