b 研究内容 | ナノマテリアル研究室

Sample Company

新規ナノマテリアルの創製と物性探索

スピネル型酸化物ナノ粒子

スピネル型構造と呼ばれる結晶構造を有する金属酸化物は,色々な元素を組み合わせて作製することが知られています.そのため,電気・磁気・光・触媒などの物性において多彩な特徴が期待できることから,基礎と応用の両分野で積極的に研究が進められています.

ナノ粒子で観測される蛍光の量子サイズ効果

物質をナノ粒子化することでサイズを小さくすると,光学特性の一つである蛍光特性は強度が大きくなったり波長が短くなるといった量子サイズ効果を示します.光電子デバイスへの応用を目指して,スピネル型酸化物ナノ粒子の構造と蛍光特性との相関について研究しています.

ワイドギャップ半導体薄膜

エネルギーギャップの大きな半導体は一般的に「ワイドギャップ半導体」と呼ばれており,紫外光など短波長のLEDやレーザーといった発光デバイスをはじめ,大電力・高速な電子デバイスなど光エレクトロニクス分野への幅広い応用が期待されています.

ナノ粒子を利用した半導体薄膜の作製

ワイドギャップ半導体のナノ粒子を用いて基板の表面に薄膜を作製しています.薄膜化することで電極が作製できるため,ナノ粒子では困難だった電気測定により,まだ不明な点が多く残されている水熱合成ナノ粒子の電気特性を調べています.

光誘起電流の伝導メカニズム解明

ワイドギャップ半導体に短波長の紫外線を照射すると「光誘起電流」と呼ばれる電流が流れます.水熱合成ナノ粒子から作製した薄膜でも光誘起電流が観測されており,将来の光電子デバイスへの応用が期待できます.低温から高温までの幅広い温度範囲で,波長や出力を多様に変化さた光照射に対して光誘起電流を測定することで,その伝導メカニズムを解明しています.

機能デバイスの開発

有機半導体とカーボンナノチューブ電極を組み合わせたX線検出器  ~ 透明フレキシブルな放射線検出器を目指して ~

昨今,医療従事者自身が治療中に目の水晶体に受ける放射線が問題になっています.特に目の水晶体は被ばくの影響を受け易く,リアルタイムモニタリングによる厳密な被爆量の管理が必要とされています.既存のリアルタイム検出器は不透明で視野の妨げとなるため,透明かつ作業の妨げにならないウェアラブルな検出器が求められています.

X線のリアルタイムイメージング

X線の検出部に有機半導体,電極にはカーボンナノチューブ,基板にはPETを利用することで透明性と柔軟性(フレキシブル)を兼ね備えたX線リアルタイム検出器を開発しています. これらの材料はどれも透明で柔軟性があるため,ウェアラブル検出器への技術応用が期待できます. また,この検出器はX線を直接電気信号に変換できるため,線量率の空間分布をリアルタイムで可視化するイメージングデバイスとしての応用も有望です. X線電流応答の線量率に対する変化を測定し,ミクロな視点で電流応答機構を評価することで,リアルタイムイメージングシステムの実現を目指しています.   

ソーラーブラインド光の検出・発光デバイス  ~ 新たなオプトエレクトロニクスデバイスの実現を目指して ~

太陽光に含まれる紫外線のうち,波長が約250~280 nmと短い深紫外線は「ソーラーブラインド光(SB光)」と呼ばれています.通常はオゾン層で吸収されるため地表に降り注ぐ量はわずかですが,人体には非常に有害であるためSB光の検出が必要とされています.一方,地表に少ない性質を逆手にとって光通信の新波長帯としての利用や,火炎にも含まれることから火災探知などへの応用も期待されています.

ワイドギャップ半導体のナノ粒子薄膜を用いたSB光デバイス

波長の短いSB光を検出するためには,エネルギーギャップが約4.5 eV以上のワイドギャップ半導体を用いる必要があります. 我々のグループでは,ワイドギャップ半導体にナノ粒子から作製したZnGa2O4薄膜を用いてSB光検出器を開発しています.スピネル型酸化物とナノ粒子薄膜の特徴を活かすことで,機械的・化学的・熱的耐性に優れた,高性能なSB光通信デバイスの実現を目指しています.