20世紀に大きな飛躍を遂げた科学技術は、情報通信やエレクトロニクスなどの急速な進歩を背景に21世紀に入ってもその速度を緩めることなく発展を続け、豊かな社会を創り出しています。私たちの生活は多くの科学技術によって支えられており、今後もその豊かさの源流は変わらないでしょう。
しかし、私たちの豊かな生活は地球環境に大きな負担を強いてしまい、環境やエネルギーにおける種々の問題を引き起こしてしまいました。私たちは今、地球にとって持続可能な科学技術のあり方を考えるべき時に来ています。さらに、東日本大震災では自然災害の猛威や福島原子力発電所の放射能汚染事故などを目の当たりにして、自然災害への対応や循環型エネルギー実用化の重要性が認識されるようになりました。一方、20 世紀末の日本は高い技術力を背景に世界一の国際的競争力を誇っていましたが、21世紀に入ると高い生産技術にも関わらず他国の後塵を拝してしまう分野が現れてきました。これは価値の多様化と現代社会の複雑化のスピードに日本が追従できなかったことが原因です。
このように複雑化・多様化する現代社会にあって、理工学系分野の大学院教育に対する社会からの期待はますます高まっています。資源に乏しい日本が国際社会の中で生きていくためには、科学技術の発展を担う人材を育成することが大切です。急速に発展する科学技術と多様化する価値観に対応できる高度専門科学技術者・職業人を養成することが大学院教育に求められているのです。
このような社会的要請に応えるために、2013 年度より東京電機大学大学院理工学研究科は、理学、生命理工学、情報学、電子・機械工学および建設・都市環境学の5 専攻体制に改編しました。理工学部5学系を基礎とする専攻体制とすることで、学部教育から大学院教育への道筋を明確にするという狙いがありました。高等教育における大学院修士課程の役割を明確化することは大学院の社会的責務であると同時に、学部学生の大学院進学の動機付けになることも期待されています。
理工学研究科は、理学と工学の調和のもと科学技術の進歩に寄与する分野の教育研究を行うところです。物事の仕組みを理解する理学的素養と人に役立つもの作りのための工学的素養を合わせ持つことで、幅広い科学技術的素養を身につけ将来の科学技術分野の進展にも柔軟に対応できる能力を持った専門家の養成を目指しています。
理工学研究科では、このような人材育成に応えることのできる教授陣や教育システム、さらに実験研究機器や設備等が充実している点にあります。また、本学は産業界との強いつながりを持っていることから、社会との連携を強化し、企業などとの共同研究を積極的に推進していることも大きな特徴です。こうした研究環境は国際的にも高い評価を受けており、これらの教育・研究環境を活用することで、高い専門分野の能力を身につけることができます。
研究は苦しいことの連続かも知れませんが、困難を乗り越えたときの充実感は素晴らしいものです。恵まれた研究環境のもと、充実した大学院生活を送って下さい。そして、みなさんが社会で活躍する姿を後輩たちに見せて下さい。